短文「雨と矛盾」



[雨と矛盾]


呼吸が響く程の静寂。
湿り気のある澄んだ匂い。
灰色の空。

もうすぐ雨がやってくることを
世界の全てが告げている。

彼女は今日も、
窓辺に座って雨を待っているのだろうか。

雨が降ると外出を嫌がるくせに、
いつだって窓の外を眺めて楽しそうに歌を口ずさんでいた。

僕が知っている中で
最も雨を嫌い、最も雨を愛した人。

耳を澄ませば、
今でもあの消え入るようなメロディが
聞こえてくるような気がする。

体の内側からにじみ出るような音を
ゆっくりと丁寧に紡ぐ姿が好きだった。

僕は彼女のように歌えない。

既に掠れ始めた記憶を必死につなぎとめ、
ただ何度も巻き戻しと再生を繰り返すだけだ。

虚しいだろうか。

僕はきっと、
彼女の次に雨を嫌い、雨を愛している。

たった一つの矛盾を受け入れる事が、
彼女を僕の中に留め続ける唯一の方法なのだ。


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んー。
なぜこの短文が生まれてしまったのか…。
正直よく分からない。

あえて理由を挙げるとするならば、
久しぶりに大好きな映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」を見たからだろうか。
ヒロインを演じる大原櫻子さんの歌声が素敵すぎて、
歌にまつわる文を書きたくなった。

ちなみに雨の日は外出したくないけど、
窓辺で雨を見ていたいと思っているのは私自身。(歌わないけど)
雨と歌を掛け合わせた結果、
哀しげな文章が生まれてしまったというわけだ。

登場人物が2人なのは、単純に書きやすかったから。
ああでも、もしかしたら「ソラニン」も混じってるのかもなぁ。




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